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by yumi_si
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<   2008年 11月 ( 5 )   > この月の画像一覧

彼女は僕の二つ歳下の大学一年生だ。
平成の伊勢大輔と呼ばれている。

美人なわけでも歌が巧いわけでもない。
ただ、校内百人一首大会で
「いにしえの ならのみやこの やへさくら けふここのへに にほいぬるかな」
が目にも止まらぬ早さで取れるだけなんだけど。

そんな彼女と僕は付き合っている。
僕らのデート先は美術館が多い。
もちろん、伊勢大輔に関係するところばかり。

今日もそう。
これは僕なりのユーモアのつもりだ。

いつも通り彼女と手を繋ごうとしたら、スルッと逃げられた。

「なんで逃げるの?」
「逃げてないわよ」
「いや逃げたって」
「手汗が凄くて滑っただけじゃないの?」
「そっかな……?」

しばらく無言で歩く。
不安になる。
彼女の気持ちが見えなくて。

「ごめんなさい。私達、別れましょう」
彼女は突然切り出した。

僕は思いがけない言葉に何も言う事が出来なかった。
なんで?
デート先のセンスが悪かった?
僕が臭かった?

「やっぱり私、生まれた時代が違う人とは付き合えないわ」

……そうか。
彼女は平成生まれ。僕は昭和。
たった2年の差だけど、今の僕らにとって、時代とはあまりにも高すぎる壁だったようだ……。
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by yumi_si | 2008-11-30 08:17 | 対処法
夏から煙草を吸い始めた。
体に悪いってことはわかってる。
でも、やめられない。
ううん、やめたくないだけかな。

煙草を吸うようになったきっかけは、あるコンビニ店員さんとの出会い。

水曜・金曜の夜中のシフトの大谷さん。
多分25歳位かな?
私より6つ位年上、だと思う。

彼のちょっぴり鋭い目の奥にある優しさに、私は惹かれてしまったんだ。

一目惚れ? そんな簡単なものじゃないわ。
だからといって、この気持ちに説明はつけられないのだけれど。

彼に話しかけたくって、お会計のときに勇気だしてみようと思ったんだ。

「735円になります」
「あ、あの」
「なんでしょう?」

「えっと…… 1番の煙草くださいっ!」
――私の意気地無し。
煙草なんていらなかったのに。

でも。収穫はあった。
あの人と言葉を交わすことができたんだもん。

そこで味をしめた私は、毎週大谷さんのシフトの時に、煙草を買いに行くことにしたの。

言葉を交わしたいだけなら、肉まんやおでんでもいいんだけどね。
太るじゃない。

おかげで煙草の火の付け方すら知らなかった私が、休み時間ごとに喫煙所に行く、愛煙家となった。

でもやっぱり私が依存してるのは煙草じゃなくて、大谷さん。
その事は間違いない。
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by yumi_si | 2008-11-27 17:47 | 対処法
初めて、恋をした。
一目ぼれだった。
相手は栗色の髪の毛がふわふわ揺れる、お人形さんみたいな可愛い子。

今日、僕はその彼女に告白をしようと思う。
結果はどうなるかわからないけど、やるだけのことはやるつもりだ。

僕は彼女のことを何も知らない。
でも、恋に落ちてしまったんだ。

だからこの気持ちは伝えるしかない、と思ったんだ。

ベタな手段だけど、机の中に手紙を入れて呼び出すことに決めたんだ。
彼女がずぼらな性格でなくてよかったと思う。
机の中で給食の残りのパンが腐ってたりなんかしたら、百年の恋も冷めるってもんさ。まだ14年しか生きてないけど。

『放課後、音楽室に来てください』

手紙にはそれだけの事しか書かなかった。
だって、ちゃんと自分の口で伝えたいじゃないか。

え、なぜ音楽室なのかって?

僕の学校の屋上は出入り禁止だし、体育館裏に来てくださいだと間違った意味でとられるじゃないか。
だから音楽室。

小さいころからクラシックに親しんできた僕にとって、リストやバッハはお師匠さまみたいなものだしね。
それに、僕にとってはお師匠さまでも、あの絵はちょっと不気味な雰囲気を出してるから、ジェットコースター現象っていうんだっけ?
その手も使っちゃえ!みたいな。

あ、来た。
一人で来てくれたんだ。
よかった。誰かと一緒だったらどうしようかと思ってたんだ。

「こんなところに呼び出して何なの?」
「わざわざ来てくれてありがとう。君に伝えたいことがあるんだ」

彼女はくりくりとした目で、僕をまっすぐに見つめる。
これから僕に告白されるなんて、思ってもみてないんだろうな、きっと。

勇気を出して僕は言った。
「世界で一番、君が好きだよ」

彼女は答えた。
「私も」

「それじゃあ……」
僕は期待して彼女の言葉を待った。

「私も世界一私が好き!」

こうして、僕の淡い恋心は粉々に砕け散った。
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by yumi_si | 2008-11-23 09:10 | 対処法
週に1度の放課後デートの最中、突然彼女がとんでもないことを言い出した。

「私、Hにかなりこだわりがあるの」
「……は?」

驚きすぎて間抜けな声を出してしまった。
彼女の前では知的でクールな男性でいたかったのに。

とりあえず、なにか反応を示さなきゃいけない。
モテる友人が
「女性と長く付き合うコツは一つ一つの話を真剣に聞いてあげることだね」
と言っていたからさ。

「僕ら付き合ってまだ1か月ちょっとだべさ?」
おや、衝撃の余り訛ってしまった。
僕が群馬県出身だということがばれてしまうじゃないか。
別にいいけど。

「どうしたの? 急にそんなこと言いだして」
どうしたのはそっちじゃないか。

まだ僕はそんな深いところまで考えてなかったよ?
いやまあちょっとは、そんな雰囲気になってくれたらなあ、と思わなくもなかったけどさ……。
僕だって健全な17歳の少年だからね!

それにしても気になる。
彼女はどんなこだわりを抱いているんだ?
まさか言葉に出せないほど過激なものなんじゃ……!
僕、体力もつかなあ?
ってか、彼女初めてじゃなかったんだ。
ちょっとショック。

「絶対Hは、必要だと思うの」
「無いよりはあったほうがいいと思うけど、まだ早くない?」
「何が?」

彼女はきょとんとした顔で僕を見上げてくる。
何故? 何故そんな告白をしながらまっすぐな瞳で僕を見つめることができるんだ?

このままでは埒があかないので聞いてみることにした。
「で、こだわりって何?」

このまま聞かずに帰っても眠れやしないだろうし。
僕が想像もしてないような凄いことを言われても、僕は受け止めてあげよう。
だって僕は彼女を愛しているからね。

彼女は答えた。
「ローマ字の話なんだけどさ、『CHI』とか『SHI』には絶対Hが必要じゃない?」

ああ、そうですか……。
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by yumi_si | 2008-11-14 20:26 | 対処法
誕生日プレゼントをあげることになった。
あんまり得意でない子から、僕の誕生日にプレゼントをもらってしまったので、そのお返しだ。
要するに、義理ってやつだ。

何をあげたらいいんだろう……?
下手なものあげて、こっちが相手のことを好きだとか勘違いさせても困るしなあ。

あいつ勘違い女だからな。
自分のことを可愛いって、いつもうぬぼれてるんだから。

そんなことを友人に言ってみたら、僕があいつのことを好きなんじゃないか、って誤解されてしまった。
「気になるほど相手のことを見てるんだねえ」って。
迷惑なんだけど、正直。

それにしてもプレゼントか……。
そうだ、これならいいんじゃないか?
うん、あいつ、あれが無いって言っていたし、これに決めた。

「誕生日おめでとう!」
爽やかに僕は渡した。
と、言ってもプレゼントは大きいものになってしまったので、台車に乗せて渡したんだ。

「え……?」
あ、若干引いてる。
まあ、いいけど。

「私、台車に乗せないといけないほど大きいプレゼントもらったの初めてだわ」
「僕も台車に乗せないといけないほど大きいプレゼントをあげたのは初めてだよ」
笑顔で切り返す。

「やだ私もしかして、特別扱い?」
違う違う。全力で僕は否定したいんだけど。
まあいいや。
中身を開けたらそうも思わなくなるだろう。

「開けてみてくれるかい?」
「うん」

ビリビリと思い切ってあいつは包装紙を破く。
几帳面な僕はそういうところが少し苦手だ。

「姿見……?」
「そう、この間家に無いから洋服決めるときに迷うって言ってたよね」
「覚えててくれたの?嬉しい」
げ、なんかあいつの僕を見る目が熱っぽくなっている。
そんなつもりはなかったんだけどなあ……。

僕があいつに姿見をプレゼントした意味は、もっと自分を見つめろってことだったんだ。
自分のことを可愛いと思うのはたいがいにしろってね。

本当の意味に気付いてほしかったな。
まあ、いいか。喜んでもらえたわけだから。

あれ?別に喜んでもらいたいはずじゃなかったのに。変だな。
でもプレゼントをあいつが受け取ったときの笑顔がなんだか脳裏に残っている、ってことは認めてあげなくもないと思った、あの冬の日。
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by yumi_si | 2008-11-09 18:30 | 対処法